【意味が分かると怖い話】彼女の家
今日は初めて彼女の家に行く日だ。
「そんなに固くなんないでよーwま、お父さんもお母さんも厳しい方だけど」
なあんて彼女は笑うが、ますます緊張する訳で。
「あれ、おまえ妹いるんだよな?」
「うん、ナツミってのがいるよ。私に似て可愛い」
ああそうかい、と乱暴に頭を撫でると、彼女は楽しげに笑った。
「ただいまぁ」
「お邪魔します」
緊張しつつ玄関に入ると、きつい柑橘系の香りがした。
見渡すと、どでかい消臭剤がある。
「こっちこっちー」
彼女に招かれ、奥へ進む。
しかし、その匂いは薄れる事なく、さらに強くなっていった。
消臭剤は探さずとも目につくようになった。
酔いそうだ、と少し思う。
ぴたり、と彼女はあるドアの前で足を止めた。
「みなさま、こちらが私の彼氏です」
そして、おどけたように言い、ゆっくりとドアを開く。
夕食の準備は既に出来ていた。
「……、何で、ナツミちゃんも?」
「ナツミはいつも、お母さんとお父さんの言いなりだもん」
今日ぐらいは私の言いなり、と悪戯っぽく言う。
暗い部屋にある3つの家族を見て、俺は悟った。
「別れるとか、絶対嫌だったの」
「……………ああ」
3体の無機質な目は、何も映さない。