【意味が分かると怖い話】不思議な箱
俺は、人の余命が少し分かるという、不思議な箱を持っている。
と言っても、そんなにすごいものではない。
路地で怪しい商品を販売している男から、面白半分で買ったものだ。
見た目は小さな木箱で、蓋を開けるとデジタル時計のセグが2ケタだけ書かれている。
そのセグは、何もしなければ全て点灯した状態になっている。
しかし誰かに向けてこの木箱をかざすと、セグの表示が変わってデジタル数字を表す。
これは、その人の余命を「分」で表した場合の下2ケタの数を表しているのだ。
例えばこの木箱を誰かにかざしたとき、セグが「32」と点灯したとする。
この場合、その人の余命は32分か、132分か……あるいは100万32分とか、もっと多いのかも知れない。
だから、結局これは暇つぶし程度にしか役に立たない。
今日、海外出張で飛行機に乗り、長いフライトの暇つぶしにこの木箱をいじっていた。
蓋を開け、何の気なしに適当な乗客に木箱をかざしてみる。
ところが、おかしなことにデジタル表示が変化しない。
日本人も外国人も、誰にかざしても表示がぴくりとも動かないのだ。
ついに壊れたかと思いながら、俺は木箱の蓋を閉じようとした。
その瞬間、数字が「87」と点灯し、俺はこの木箱が壊れていないということに気づいた。